香月泰男展

左が今回のチラシ、真ん中が今回買った画集、右が1冊目
左が今回のチラシ、真ん中が今回買った画集、右が1冊目

 

もう終わってしまったんだけど、最終日にギリギリ観に行けた洋画家の香月泰男展、とーっっっても良かったです!とってもとっても良くて、もっと早く観て、1人でも多くの人に勧められたらよかった〜と思ったほど・・・。気付いたら2時間半も過ごし、出た時には私も友人もクタクタに疲れていました・・・。

 

香月泰男は20世紀に活躍した山口県出身の洋画家。

 

同時代、同じく山口出身で香月さんとも東京芸大の先輩・後輩という仲の松田正平という画家がいるのだけど、元々その方の作品が大好きで、10年以上も前に山口県を通過することがあった際、松田正平さんの作品目的で立ち寄った美術館で目にした香月さんの作品にも引き込まれてしまいました。その時はランダムな作品展示だったと思うのだけど、とても印象的だったので画集を買い、名前を記憶しました。

 

最近(と言っても9月頃)新しいお仕事の案件で鎌倉に打ち合わせに行ったところ、香月泰男展のポスターを見つけ、これは絶対行く!って思ったものの、葉山という行きにくさもあり、やっと行けたのが最終日14日になってしまいました。12日が誕生日だった友人のお祝いに私の趣味を付き合わすという(でも喜んでくれました笑)、とても充実した日になりました。

 

香月泰男の代名詞といえば、「シベリア・シリーズ」という57もの連作があるのは知っていたのだけど、今回初めてそれらと対面しました。私、画集で観る限りあまり好みでもなさそうで、おどろおどろしいし、まぁ勉強に観てみようくらいだったんだけど・・・これが衝撃、圧巻の作品群でした。

 

香月さんは幼少期から絵の才能があったけど、太平洋戦争でシベリアに約4年半従軍、抑留されて帰還した方。その体験をその後57もの作品に刻み付け、74年に62歳でお亡くなりになりました。

 

大きくて暗い画風の「シベリア・シリーズ」は、作風と主題が見事に合致して、私はいくつかの作品の前で思わず鳥肌を感じずにはいられませんでした。これだけの技量や表現力をもった人が、これだけ悲惨な体験をして、生きて帰り、主題に対してこれ以外ないという画風を独自に生み出し、表現することができたのは、ある意味揃いすぎた宿命だったのだなと。同じように戦争を経験をした人はいっぱいいたし、その中には絵描きもいたと思うけど、亡くなった方もいただろうし、生きて帰ってもこれだけ正しく表せた人は他にいなかったのじゃないかなと思います。ピカソの「ゲルニカ」はスペインの内戦を表現したものとして有名だけど、私はこの「シベリア・シリーズ」は、それに匹敵するか、もしかしたらそれ以上の歴史的、芸術的価値があるんじゃないかとまで感じました(と言いながらゲルニカは観たことないのだけど!)。これから先、戦争を知らない時代になると益々価値を高めていくだろうな、とも思いました。

 

香月さんの作品の一番の特徴はその独特で美しいマチエール(表面の質感)で、画材に炭などを配合して生み出した立体的な肌感は、自然の中に存在する岩肌を感じるような、粗野な陶器を愛でるような、そういう普遍的な美しさを感じます。なんというか、人が画材を塗りつけて作られたものというよりは、自然の中で雨風が経年で作り上げたような、地層の中からキラキラと発掘されて出てきたような、そういう非人工的な美しさ。

 

「シベリア・シリーズ」は40代半ばから晩年まで制作されたものなのだけど、展示冒頭は20代からの試行錯誤の様子も観られる構成になっていて、初期はすごく素直に貪欲にゴッホやピカソなど模倣していて興味深かったです。ただ絵が巧いだけではなく、画家がどのように模索し、独自の作風を掴んでいくか垣間見られるのはいつも面白いと思います。

 

香月さんの作品は画集などでフラットに縮小して印刷されてしまうと良さが半分くらいしか伝わらないのが本当に残念なのだけど(!)、その分だけ、もしこの先この名前を見かけたら、ぜひ本物を観に行ってほしいと思います。

 

ってそれ以上に、もっと早くご紹介できれば良かった・・・!

 

 

↓伝えきれないけど、参考に画集の画像載せておきますね。

初めて訪れた神奈川県立近代美術館・葉山館。海からの夕日による人影と、彫刻(中央)はイサム・ノグチ
初めて訪れた神奈川県立近代美術館・葉山館。海からの夕日による人影と、彫刻(中央)はイサム・ノグチ

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