お国のためには眠るに限る(お金シリーズ#005)

SLEEPY 2015 ©︎ Hanae Tanazawa
SLEEPY 2015 ©︎ Hanae Tanazawa

 

お金シリーズ#005です。

 

 

バックナンバー:

#001(序章はここにリンクあるので今回から省略)

#002

#003

#004 ←*一月毎に1%ずつ減価する貨幣(地域通貨)を実際に運用し、経済を回復させたオーストリア「ヴェルグル」という町の引用ページを追加しました。

 

 

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常日頃、社会に貢献する信念と愛国心に熱いハナエは、昨日も今日も(そのちょっと前はうっかり早く起きてしまったけれど)、朝10時までよく眠ることで社会貢献を怠りませんでした。こんなにしっかりと眠る働き盛りの日本人はそうそういないのだから、いいかげん勤労感謝状の一つや二つが届いても良いのではといぶかしく思っているくらいです。

 

 

眠ると言うのは第一に、健康管理にとても大事なことです。

 

第二に、国はよく眠る国民というのを求めているのです。

 

とある元首相さんは、わざわざこんなことをおっしゃっていたくらいですから。

 

 

「国民には眠ってもらっていた方が良い。」*

 

 

こんな真っ当な発言しかしないその元首相さんは、どういう訳か口を開けばすぐ辞めさせられる、ちょっとかわいそうな人でしたが・・・。

 

 

***

 

 

眠っているというのは、確かに便利なものです。

 

例えば子沢山のお父さんとお母さんが小さな子どもたちを車でどこかに連れて行きたいとき・・・。後ろで騒がしくされるくらいなら、一人でも多くの子どもが寝ていた方が、引率者としては楽なのが想像できます。

 

 

国というのも、そんな感じで、国民にはなるべく眠っていてもらいたいのです。あっちに行け、こっちに行け、運転がどうだ、あれはなんだと口出ししてくるバックシートドライバーは、鬱陶しいので、物言わぬ国民が大好きです。

 

眠っている国民と同じくらいに、国は忙しい国民も大好きです。忙しい国民は疲れ切って考える時間も労力もないから、同じくらいに一つのところに連れて行きやすいのです。

 

 

そういうわけで、運転手は、なるべく自分の運転に関わらせないように、ラジオはわざわざ退屈な国会中継なんかを選んだりして(その国会中継はわざわざ退屈な作りをして)、

 

「いいよ後ろの君たちは。寝ててもいいし、ゲームをしても、漫画読んでも、音楽聞いても、おしゃべりしても、好きにやっていてくれればいいんだよ」

 

とさも親切そうに、かたくハンドルを握りしめるのです。

 

 

多くの人たちは車外にいるつもりでいて、残念ながらみんなが同じ車の同乗者です。気付いたら燃料不足で暖房が効かなくなっていたとか、お金を回収されて前の人たちだけで美味しいもの食べてたとか、連れてかれた先はサービス残業ばかりの強制労働所だったとか。よくあることなのですが、連れて行かれた本人たちは、眠っていたり、他のことに忙しくて、いつの間にかそんなことになっていたとは気がつかないことがほとんどです。

 

 

お金も同じような振る舞いをしますが、よりしたたかでそつのないところは自動運転の新幹線みたいです。大勢をスマートかつスムーズに乗車させ、搭乗者になんの疑問を抱かせることもなく快適に一つの方向に向かわせます。景色は流れ去って具象性を欠き、下車駅を一つ間違えたらあっという間に望まぬ遠くまで連れて行かれてしまうのです。

 

 

そういうわけで、車にしても、新幹線にしても、運転手に口出しまではしなかったとしても、時々は窓の外に目をやって、どこに連れて行かれそうなのかとか、ドアの位置とか、そんなのくらいは知っておいた方がいいのかなと思って、私も少しは目と口を開くことにしました。

 

でもそうすると、運転手だけじゃなくて、他の搭乗者たちにも疎まれてしまうのですけどね・・・。そっちの方が、むしろ悲しい・・・。

 

 

 

今回はここまで。

 

 

 

 

*森喜朗元首相のこと。正確には、無党派層について「そのまま関心がないといって、(投票に行かずに)寝てしまってくれればいいんですけれども、そうはいかんでしょうね」という2000年衆院選の際の発言。

 

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