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宮脇綾子展




ダリ展前日の2月15日、東京ステーションギャラリーで開催中の「生誕120年 宮脇綾子の芸術 見た、切った、貼った」展に行ってきました。


勉強不足で存じ上げなかったのだけど、インスタグラムの広告に惹かれてのこと。こういう広告に出会ったときはSNSのアルゴリズムに感謝します。笑 ダリもこちらも広告で知り、その後フォローさせていただきました。


宮脇綾子氏(こういう時の敬称って何が正しいんだろうか。固有名詞になった「呼び捨て」が一番敬意がこもってる気がするので以後省略)は終戦を迎えた1945年、40歳のとき、「防空壕に出たり入ったりの時間が空いた・・・この時間で何かやろう」と、手近にあった古布でアップリケ(表記はアプリケ)手法による創作を始めます。

洋画家の夫・宮脇晴の「対象をよく観察しなさい」とのアドバイスから、野菜や魚など身近な題材を念入りにスケッチし、アプリケに落とし込みました。幼少期からの美的センスと日常の裁縫技術が掛け合わさり、アプリケを芸術のレベルまで高めた方と言えます。



 


「見た、切った、貼った」というのであれば、私が普段行っている紙によるコラージュでも同じことが言えるのだけど、アプリケの手法には加えて「縫った」があり、私からしてみると大きく異なるところです。仕上がりもアプローチもだいぶ違うと思っていて、私は手法よりも構図や色彩など別の部分を参考にしていました。


これは完全に私なりの分類ですが、アートの制作工程/アプローチは大きく分けて2つあり、一つは〈ダ・ビンチ・ルート〉。もう一つは〈ミケランジェロ・ルート〉と命名。


〈ダ・ビンチ・ルート〉では詳細なスケッチや解剖、分析の上に丁寧にデッサンを重ね、絵具などを塗り重ねていく、工程としてはプラス、プラスの作業。方向としては、ミクロからマクロ。

例えばレゴブロックや刺繍、編み物、線描など、忍耐と緻密さを要するイメージ。


対して〈ミケランジェロ・ルート〉はまず最初に大きな大理石があって、その中に埋まっている像を掘り起こすというマイナス、マイナスの作業。方向は、マクロからミクロ。

彫刻、マティスのようなコラージュ、身近なところだとヘアカットとか、大胆さとインスピレーションに導かれるイメージ。


私は後者の方が得意なタイプで、だから折り紙による切り絵の画法がとてもしっくりくるのです。一方で緻密に積み上げるような編み物や刺繍は途中で暴走したくなってわ〜〜〜!となる。笑


両方を掛け合わせたようなアプローチも当然あって、プラス、プラス、途中でマイナス、プラスして最後にマイナスで仕上げ、みたいなこともよくあるので、別にこんな分類意味がないと言えばないのだけど、アートを観るときの一つの観点にはなると思うのでよかったら注目してみてください。他にも、例えば何かものを作りたいのにうまく行かない時は、そもそも適正ルートが違う可能性があるかもしれないのです。



 


話は戻りますが、宮脇綾子はある解説でマティスとも比較されていたのだけど、私の判定では〈ダ・ビンチ・ルート〉タイプなので、全然別物のように感じます。彼女は目指すべきイメージを幾度もスケッチし、布に線を引き、切り出し、意図的に素材を操作した上で緻密に縫い上げます。その際にすごいと思ったのが、こんなに意図的なのに、それぞれの線、例えば根っこや茎などがわざとらしくなく、あたかも自然に味のある形で縫い付けられていること!チクチクと緻密に縫い付けているのに、さっと一筆で書いたような線なのです。一緒に行った友人は書道をやる方で、同じ点に気づいて驚いていました。ようは、下手っぽい線を上手く引ける。こういうのは天賦のセンスというか、私自身は意図するとダサくなるタイプなので、器用で本当に羨ましいなと思いました。エリック・カールや荒井良二(どちらも絵本作家)辺りを彷彿とさせます。その他構図や色彩、布選びの素晴らしさ、サイン「あ」を入れる場所の面白さなど観る部分はたくさんあったのだけど、なぜか妙なところを力説してしまったので今回はこれくらいにします。


東京ステーションギャラリーは東京駅丸の内改札すぐ横という超アクセスのよさ!旧東京駅を活用した建築の面白さや、展示量に対してもかなりお手頃なので、よければぜひ立ち寄ってみてくださいね。







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