
猫の「愛」が背中を向けて私を待っている。
私が相手にできない時は、10分でも、20分でも、お気に入りの爪とぎボックスの中に入って。そこは愛が安心して私に触れてもらえる場所だから。
健気な後ろ姿がキュンとくる。半年以上ベッドの下に隠れていた彼女は、長いこと人の手を恐れていたのだから。
本当は触れられたいのに、逃げてしまう。ずっと待っていたのに、ようやく触ったら逃げてしまうこともある。でも触られたくて、また戻ってくる。彼女はジレンマという箱を何度も出たり入ったりしている。
動物に限らず、愛されることは喜びであり、恐怖だ。一度得た幸福を失うことは怖い。一度経験した恐怖を拭うこともまた容易ではない。
愛は未だに私が両手で抱き上げることを許さない。人間に捕まることの恐怖心は、彼女の身に染み付いてしまっている。
でも、だからこそ彼女が見せる背中は尊い。私にもはっきりと分かるのだ。背中では許してくれている。私に向けて、愛を発してくれている。
(2月6日筆・15分)

zuihitsu・・・前日自分に課したキーワードをお題に、最低400字(原稿用紙1枚)で書く練習をしているものの一部出し