「泡」
- tanazawahanae317
- 5月14日
- 読了時間: 2分

かつてとても好きで憧れていた(今も美しい)女優のニコール・キッドマンが、何かの華やかなパーティーで煌びやかなドレスに身を包みながらインタビューを受けていた。その受け答えがやけに印象に残っている。
「この世界(ショービジネス?)は泡(バブル)だから。こういったパーティーは泡(バブル)だと思って、楽しむことにしてるのよ」
この一言にはどこか彼女らしい知性というか、複雑さから導き出された単純さが感じられて、ただのパーティー好きではないメランコリックさが、言っている内容とは裏腹にスパイスのように引き立った。やけにはしゃいだ印象だった気もするが、おそらくそれも演技だったのだろう。はしゃがずにはいられない空しさ「空(くう)」を、確かに泡(バブル)は持ち合わせている。
……と、そういいながら私たちも、日常でささやかなバブルを心底楽しんでいる。
ビールや炭酸のシュワシュワっとしたバブル。カフェラテやカプチーノに乗っかったクリーミーなバブル。もこもこにして顔や体を包み込む石鹸のバブル。艶やかな儚さのシャボン玉。
泡(バブル)があるうちに、泡(バブル)は楽しんだ方がいい。なくなる瞬間はこのすぐ一秒後にも訪れてしまうのだから。慌ててグラスに口元を近づけるように、それが消えてなくなる前に。
その後のニコール・キッドマンのもう一つ別のインタビューもやけに記憶に残っている。VOGUEか何かの映像で、彼女がオーストラリアの豪邸を自ら案内するというような内容だった。
大きくて美しいカントリーハウスをご機嫌に一通り見せてくれた後、建物を背景にインタビュアーが最後に無邪気な質問を投げかけた。
"So, are you happy now?" ーーそれで、あなたは今幸せですか?
インタビュアーはシンプルな”YES!"を期待し、それで気持ちよく映像を締めくくりたかったのだろう。しかし、それまで笑顔で邸宅を案内していたニコール・キッドマンの表情が一瞬にして曇った。
"....You mean, seriously?" ーー実際のところを聞いてるの?
そして一瞬の間の後、
"NO." ーー全然。
不機嫌な子供のようになったニコールは、私が初めて見た人間ニコール・キッドマンだった。
(5月7日筆・20分)
zuihitsu・・・前日自分に課したキーワードをお題に、最低400字(原稿用紙1枚)で書く練習をしているものの一部出し