A Day Trip

今朝いつもより早めに起きた曇りの空気が気持ちよくて、仕事も切れ間だし、不意にプチ旅行したくなって「バンクシーって誰?展」に行ってきました。

 

場所は品川の寺田倉庫。駅から20分くらい歩くんだけど、途中おしゃれなお店とか色々あって、普段の私だったら帰りに寄ろうなんて気になるのに、今日はすでにうんざりな気分。

 

なんでかわからないけど、歩きながら久しぶりにガーナの街中を思い出して、全く見知らぬおばちゃんから「オブロニ(ガーナ語で「外人」)、どこから来たの?うち寄ってご飯食べてけ」なんて気さくな笑顔で言われた(まぁまぁよくある)あの瓦礫のようなコンクリート塀のお庭の風景を思い出したりしていた。今本当に行きたいのはあんなおばちゃんがいて、薪で調理している周りに子どもや鶏や山羊がたくさん動き回っている、あの庭先。そこに呼ばれるままに座って、差し出してくれるミルクティーかなんか飲んでゆっくりおしゃべりしたい気分だった。

 

 

実はバンクシーは2回目で、たまたま読んだがとても素晴らしくて興味を持ち、昨年横浜で開催された「バンクシー展 天才か反逆者か」(今も福岡でやってる!超おすすめ!)がとても良かったので、今回も行こうと決めていた。今回の展示は映画のセットのように実寸大(?)でバンクシーのグラフィティを再現しているので、全てが実物ではないにしろ、空気感が伝わってきてよく工夫された展覧会だったと思う。

終わりに近いエリアで、バンクシーがイスラエルやパレスチナで発表したゲリラ的なアートが再現されていて、その時不意に、来る道すがら思い出していたあのガーナのおばちゃんたちの光景が、ものの見事に重ね合わさってしまった(ちなみにガーナは平和な国!)。

 

この子猫の壁画は、パレスチナのガザで描かれたものを再現したもので、左奥の壁にはその周辺の風景が写真で再現されている。足元には瓦礫や雑草や、所々に洗濯物も干されていたり。私は今回の展示で、どのバンクシーの作品も本当に見事だったけど、一番印象に残ったのが、(ここでは見えないけど)この風景の中で遊ぶ子どもたちが写真に映った姿だった。

 

前回の展示会で受けた「バンクシーって超すごい、ほんと天才!」っていう、そのセンスあふれるウィットや表現力への感動だけではなく、彼がその危険な活動を通して世界中に伝えようとしている、目を背けたくなるような「超現実的」なメッセージを、私は今回とてもパーソナルに受け取ってしまった。

 

この命題
この命題

バンクシーの素晴らしさは容易に語り尽くせないけど、展示会を出ると、彼が忌み嫌うミュージアムショップがあって(それもまた皮肉、そしてミュージアムショップに関しては私も常々感じていたこと)、私はカタログを一冊だけ買い、本当は感動とか刺激でもっと晴れ晴れする予定だったのに、なんだか落ち込んだような気分で会場を後にした。

 

来るときは、帰りはお洒落なカフェにでも寄ってカタログでも眺めてから帰ろうと思っていたのに、もはやお洒落なカフェなんか寄りたくない。空気が気持ちよくて人目も気にならない川沿いの石段に座って、水筒の水を飲みながらカタログをめくることにした。

 

ページをめくりながら、少し悩ましい気持ちになる・・・これ、本当に大声で言えないんだけど、私、結構物を作るのが仕事なのに、時々物にうんざりすることがある。商業的にアートを活用することは好きで向いていると思うし、人から喜ばれることに純粋に楽しさや幸せを感じるけど、今日は商業主義的なアート市場への抵抗や疑問符を投げ続けるバンクシーの活動に改めてやられてしまった。消されたり、上書きされたりしてしまうグラフィティという路上アート。ハリボテじゃない、これほどまでにリアルな表現ができたらどんなに清々しいだろう。

 

雲行きが怪しくなってきたので、結局どこにも寄らずクタクタになって帰ってきて、むくんだ脚を投げ出しながらうたた寝したら、足元には猫がいて、窓からの雨音と湿った空気が心地よく、南国の海で泳ぎ疲れた時にする気だるい昼寝のようでとても気持ちが良かった。

 

 

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