この不定期なブログを一年以上覗きに来てくれている人には言わずもがなに知れた話ですが(え)、そう、今日4月16日は、5ヶ月間山中湖で失踪した猫のミーと、無事に再開を果たして丸一年目という超・超・超記念すべき日!
あの日のことは、もう本当昨日のことのように思い出せますよ・・・。
再会したあの瞬間は、もうたまらない気持ちだった・・・。
今はなき柴犬のさんちゃんもまだいた頃・・・。
猫の失踪事件に関しては、当時の辛辣な心情とは裏腹に、今となってはほとんど笑い話になっていますが、再話するに及びませんので気になる方はこちらを→見つかった日のブログ。
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生粋の野良出身、推定年齢7歳オス猫(去勢済み)ミーは、しかし昨年の経験があまりにも身に染みたのか、横浜の狭いアパートで見事に一匹の家猫に転身した。野良としての一生を諦め家猫となることで魂を売ったとか、これはそういう挫折物語ではない。
今や、彼の内心としては、(人間年齢)40代半ばにしてようやく遅咲きの春を迎えた、と言ったところである。
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比較的単純労働にしては一般平均程度の安定収入(カリカリの餌)に週数回のボーナス(缶詰の餌)、社会保障(インドアトイレと不定期検診)という夢のような正規雇用の座を得たのだから、これからの生涯はなるべく穏やかに、この安らかなポジションを死守する、というのが我(われ)が集中すべきただ一点である。窓の外で鳴く鳥たちは過ぎ去りしアイドル、扉の向こうに溢れる光は自由という名の愚の誘惑。もはや騒ぎ立てることもなければ、近づくことすらない。我はこれまでの半生で、これらをすでに知りすぎるほどに知ってしまったのである。
しかしどんな世界もそうであるように、正規雇用もいいことばかりでもない。なにしろこの雇用主、当時すでにこの穏やかな勤務態度で過ごしてきた我に唐突に不当解雇を突きつけてきた由々しき前科持ちである。(猫勘定)2年近くも凍った山中で罪なき罪を罰され、「悪かった悪かった」と泣きながら呼び戻されたとて、再び100%の信頼を預ける心持ちには到底なれまい。
以前よりも多く出社(在宅ワーク)してはいるものの、不定期なタイミングで外回りに(長くて一日)出かけることもマチマチな雇用主。どんだけ余分に給料を(餌を餌皿に)振り込んだつもりであったとしても、雇用主が帰らぬうちに全てを使い果たす(食べ切る)ような愚かなことはもはやせぬと、もうあの冬の山中、腹と背がくっつくほどの空腹を感じながら痛いほど学んだ。人は信用できるものであるが、100%はならぬ。だからそういう時は、仕方がないからなるべく集中して勤務(昼寝)に励むことで腹の虫を抑え、雇用主が帰ってきたらようやく口座を空にしても良しと判断する。我はそれほどに賢い猫になったのだ。信用おけぬ雇用主に雇われると苦労も余計に多い。
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なるべく事を荒立てず、ただ静かに坐すことがこの社会を生き抜く一番の術だ。そのことはこの数年この会社で一番に学んできたことだし、中年となった我が身では、体力が衰えることと反比例するように精神性は増し、坐し続けることが段々と苦痛ではなくなってきた。問題はそこではない。
これはやや神妙な告白にはなるが・・・ただ耐えるは、時より、いや日に何度も襲ってくる雇用主からのセクハラ(急に抱き締めてきたり、体を撫でる、キスする、手を繋ぐ、じっと見つめてくる、盗撮・・・、などそれはそれはもう・・・!)に大袈裟に声を荒げることなく、ただなるべく穏便に、少しの間を与えたのち、何事もないかのようにそのいやらしい両腕の間を我が軟らかな肢体と滑らかな毛の流れを活かしてすり抜け(ここで絶対に爪を立ててはならない!)、雇用主の気分を害さない程度に距離を移したところで、最大限の抵抗姿勢として我が臀部を向こう側にし、また静かに丸くなるのである。雇用主もこのセクハラ行為で完全に我から嫌われることを一番に恐れているようであるから、こうしておけばそれ以上にしつこくしてくることはない。ただ問題なのは、その恐ろしい時間は日に何度も何度もやってくる・・・!「愛してるよ」と呟いてきたり・・・!!!
そうそう、セクハラといえばもう一つ、この雇用主、執拗に我が目と鼻を拭いたがる癖があり、これはやられる中でも一番不愉快極まりないものである。日に何度も何度も首根っこを押さえつけられ、後進することを妨げられ動けなくなった我が顔面から、白い薄っぺらいもので目と鼻の水分を拭われたあとは、そうは言ってもなかなか爽快なことは否めない。しかし、そんな暴力的な行為を日に何度もしてこなくても、我は我で、目についたものも、鼻に詰まったものも、ただ首をブルブルと高速回転させれば十分対処できるというのに。
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もっとも能動的にしなければいけない仕事が一つあるとしたら、それはこの雇用主に対して、そろそろ給料日(餌の時間)ですよ、とか、もうちょっと給料上げて(餌を上等にして)とか、そういうプレゼンを割と頻繁(毎日)にしなければいけないことである。人間界にも様々な生存戦略はあるようだが、猫だって戦略は一つではない。ポイントは、一番はやはり声色の使い方である。その発し方、頻度、間、音階、音調、フォルテッシモにクレッシェンド。それ以外では目線、瞬きのタイミングや、速度。プレゼンの姿勢も、ただ静かに両腕(前足)を揃え腰を落ち着かせた方がいいこともあれば、印象的に移動を繰り返す、あえて物陰から見つめる等、様々。どの組み合わせが今のこの雇用主の心を一番動かすのか、これを見極めるには熟練の技と並外れた集中力を要す。声を大きめに連呼することが効果的な日もあれば、口だけ開けて音にならない「(ア)」をそっと発するだけの方がうまくいく場合もある。この時はなるべく我が(欠けた)牙が可愛く見えるように意識する。そちらがこちらを見ているなら、こちらだってそちらを見ている。けたたましいほどに騒ぎ立てないと顔を向けてくれないような(雇用主は集中して何かをやっているとき)なら前者、比較的頻繁に目があって、「可愛いな」なんていうセクハラ上司の顔をしているときなら後者が効果的だ。そちらがこちらを使うなら、こちらだってそちらを使う。
と、まぁ、給料(餌)に関しては命に関わることなのでお互いに真剣勝負ではあるが、この会社に再就職したのも何か一つのご縁。耐えなきゃいけないことは日々多くとも、この雇用主とは墓場まで面倒見てもらうつもりで仲良くやっていきたいと思いながら、今もまた我が臀部をあちら側に、その膝の上で鼻提灯を膨らませている。
完
・・・って
しょうもない突然の漱石もどき何?!
今日はあとチャップリンの誕生日!とかそういうこと書きたかったのに。
言いたかったのは、
ミーちゃん帰ってきてくれてありがとう!
愛してるよ♡でーす笑
終