出木杉くんは、やっぱり出来過ぎだった(お金シリーズ#011)

Happy Bird-day 2013 ©︎ Hanae Tanazawa
Happy Bird-day 2013 ©︎ Hanae Tanazawa

 

 

お金シリーズ、いよいよ本題です。

 

 

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***

 

 

#008、#009から継続中の舞台設定。

公園でのび太たちがお金稼ぎごっこ中。

 

出木杉くん登場。

 

出木杉くん:「やぁ、君たち楽しそうな遊びをしているね。僕も仲間に入れてくれないかな」(と勝手に入ってくる)

「なになに、のび太くんったら 1000円もお金を稼いだのか。大金じゃないか!僕が銀行役になってそのお金預かってあげるよ」

 

のび太:「君がいきなり銀行役だって?そんなのできるもんか!」

 

出木杉くん:「のび太くんったら、僕を信用してないのかい?」

 

のび太:「いやぁ・・・(よく考えて)出木杉くんほど信用できる人はいないけど・・・」

 

出木杉くん:「だったらいいじゃないか」

 

のび太:「・・・まぁそうだけど・・・預けるって、一体どうしたらいいのさ」

 

出木杉くん:「君が僕にその1000円を渡して、僕は紙に「のび太くんの預金1,000円」て書いて渡すのさ(と、サラサラ紙に書いて渡す)」

 

のび太:「それだけ?」

 

出木杉くん:「あぁ、それだけ。使いたくなったらいつでもまた僕のところに来ればいい」

 

安心したのび太は出木杉くんにお金を全て預け、そのまま遊びに行ってしまいました。

 

そこへしずかちゃんが近づいてきました。

「(困った顔で)まぁ出木杉さん、銀行になったの?私文房具を買うのにお金が足りなくて、少し貸してくれないかしら?」

 

出木杉くん:「あぁ、いいよ。しずかちゃんならなんの問題もないから、900円までなら貸すことができるよ」

 

そう言って出木杉くんは、のび太が預けた1000円のうちから10%の100円だけを手元に残し、900円をしずかちゃんに貸しました。お金を渡す際、「しずかちゃんの借金900円」と書いた紙を、一枚は自分のポケットに、一枚はしずかちゃんに書いて渡しました。しずかちゃんは900円と紙を嬉しそうに受け取ると、「必ずすぐ返すわ」と言って去って行きました。

 

次に来たのはその様子を見ていた3才のハナエです。よくわかっていないのですが、面白そうだったのでお金を借りるごっこをしてみました。

 

出木杉くんはハナエに810円までなら貸せると言って、「ハナエの借金810円」と書いた紙を、一枚は自分のポケットに、一枚はハナエに渡しました。ハナエはすぐに使う用事はなかったので、数字が書かれた紙だけを喜んで受け取って去って行きました。出木杉くんは少し不安だったので、3才のハナエに「ちゃんと810円返すんだよ。返さなかったら君の810円分のおもちゃをもらうからね」と念押ししました。

 

・・・

 

そんな感じで、出木杉くんは来る子ども来る子どもに、前に貸した子の借金から10%だけは手元に残るように貸し続け、最後に貸せる金額が5円になったときに全ての取引を終わらせました。ハナエの次の子は729円、その次の子は656円、次は590円、531円、478円・・・というように。(最終的にはずっと5円、5円、5円、になってしまうので取引をやめました。)

 

と言うわけで、この日、のび太くんの1000円から出木杉くんが取引した公園の子どもたちは全部で51人、出木杉くんのポケットに溜まった紙の、借金で生み出されたお金の総額は8871円分にもなっていました。

 

夕方、のび太がふらふらと戻ってきて、

「出木杉くん、僕の1000円返してくれないかなぁ」

と言ったので、出木杉くんは、

「あ、今日の窓口業務は終わりました!」

と言って、公園を足速に去って行きましたとさ。

 

 

チャンチャン♪

 

 

***

 

 

このような数字によるお金の増え方のことを、「信用創造」といいます。

 

信用創造は、言葉だけうっすら知っている人もいるかと思うのですが、調べてみてみいまいちその成り立ちがはっきりしません。でも、#010でもお伝えした通り、私たちは資産の多くを数字という概念で扱っているので、普段引き出されることはないだろうというお金を銀行が運用するというのは自然発生的にも意図的にも考え得ることです。

 

信用創造の信用って、誰が誰を信用するんだろう?と改めて疑問に思ったのですが、多分双方に信用しないと成り立たないことなのだと思われます。

 

以前はお金が物質的価値である金に紐付いていたので、それが信用となっていたのですが、日本は1931年に金本位制度を廃止しています(アメリカよりも40年も早い!#001)。

 

のび太くんは、出木杉くんを信用してお金を預けました。そして、出木杉くんは、しずかちゃんや他の子どもたちが返してくれると信用してお金を貸しました。

 

今回はわかりやすいように、10%を手元に残すという設定にしましたが、銀行が預かり金を一部手元に残すこと(正確には日銀に預けること)を準備預金制度と言います。実際の預金準備率は0.8%*とのことですから、実際にはもっと無限大にお金を増幅させることができることになります。

 

 

そして何よりも重要なポイントとなるのは、出木杉くんが紙(=しずかちゃんの口座/通帳)に「借金900円」と書くのと同時に、しずかちゃんは900円という「資産」を得たということです。つまり、額面上で「借金」が生まれるのと同時に、同額の「お金」がこの世に生み出された。その後に続くハナエは、これまた自分が受け取った810円を、借金とはいえ自分のものと思い込み、しずかちゃんの借金から生まれたものだとは感じません。これが現代の借金からお金が生まれる仕組みなのです。

 

数字を書くだけでお金が生まれることを、以前は「万年筆マネー」(万年筆で小切手に数字を書いたことから)とか、最近では「キーストロークマネー」(パソコンのキーボード入力でお金を生むことから)とか言うそうです。それを担保する金などの裏付けはもうありませんので、私たちはただ信用という、これまた概念のために命懸けとも言えるやりとりをしているのです。

 

これだけでも十分おかしな仕組みだけど、この借金に上乗せして金利がくっついてくるので、それがまた問題をさらに大きく、逃れがたいものにしています。

 

 

次回はそのことについて。

 

 

***

 

 

後記:

 

これを書くにあたり、出木杉くんの性格などについても調べてみたのですが、彼は頭がいいだけでなく、その名の通り非の打ち所がない素晴らしい人格者なので、実際にはこんなことしそうもないですね。出木杉くん、なんかごめん。笑

 

 

 

*参考:https://www.ceicdata.com/ja/indicator/japan/reserve-requirement-ratio#:~:text=日本の預金準備率,値で平均は%200.7%20%25%E3%80%82

 

 

参考図書:大西つねき著『私が総理大臣ならこうする』白順社, 2019 第2刷, pp. 44-49

*数年前の書籍のため、具体的な数字は今とは違うところがあります

 

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